墓じまいとは、先祖が眠る墓から遺骨を取り出し、現在の生活に適した場所へと移すことを指します。いわば、お墓の「引越し」と言ってよいでしょう。
「日本の将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)によると、2065年には日本の人口が1億人を下回る見通しとなっています。一方で、離婚率の上昇や未婚・晩婚化、少子高齢化の進行によって、家族が代々墓を守り続けるのは難しい世帯が、今後も増加すると考えられます。
先祖代々受け継いできた墓を、今後も変わらず守りたいでしょうが、「お墓が遠くて管理が難しい」「墓を引き継ぐ家族がいない」などの理由で十分な供養ができない家庭も少なくありません。墓じまいは現代における新たな供養の形として注目を集めています。
墓じまいは法的な手続きを踏む必要があり、費用もかかります。慎重に進めなければトラブルも発生します。悪質な業者による高額請求や詐欺被害に遭うケースも報告されています。
今回は、墓じまいの手続きの流れや費用、起こりがちな法的トラブルと解決策について、弁護士が詳しく解説します。
- 墓じまいは、現代の少子高齢化、未婚・晩婚化などを理由に増加中
- 墓じまいは、離檀を申し入れ、改葬許可を取得するなど手続きを要する
- 高額の離檀料の要求、悪質な業者による詐欺被害などのトラブルに注意
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墓じまいとは

墓じまいとは、先祖が眠るお墓から遺骨を取り出し、適した場所へ移すことを指します。
具体的には、現在のお墓を撤去し、遺骨を別の墓所へ改葬したり、永代供養墓や納骨堂に納めたり、散骨など別の供養方法へ切り替えたりする方法があります。「お墓をしまう」イメージから、「墓じまい」と呼ばれるようになりました。
墓じまいを行うことで、残された家族の負担を軽減し、供養しやすい環境を整えることができます。一方で、墓じまいをせずに長期間管理せずに墓を放置すると、「無縁墓」となるおそれがあります。近年、引き継ぐ人がいない無縁墓が増え、墓石が不法投棄されるケースも問題となっています。
「代々受け継いできたお墓を手放すのは『罰当たり』だ」と罪悪感を抱く方も少なくありません。しかし、管理が難しくなった墓を放置するよりも、墓じまいや改葬を通じて、無理のない形で供養を続けていく方が良い場合もあります。
墓じまいを行うには、法律で定められた手続きを踏む必要があり、墓石の撤去、業者の選定、新たな供養先の契約など、様々な費用もかかります。
墓じまいが増えている理由
墓じまいが注目されるようになった背景には、現代社会の変化が影響しています。
時代の移り変わりと共に、先祖供養のあり方も変化し、新たな形が求められるようになった結果、墓じまいを選択する人が増えています。お墓を継ぐ人がいなかったり、実家が遠方なため管理が難しくなったりすると、墓が手入れされず無縁墓として放置される危険があります。
少子高齢化と家族形態の変化
「日本の将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)によれば、2065年には日本の人口が1億人を下回る見通しです。出生数の減少と死亡数の増加が続き、総人口は減少傾向です。
また、生涯未婚率の上昇や晩婚化の進行により、独身のまま生涯を終える人や、子供を作らない選択をする夫婦も増えました。核家族化が進み、親と離れて暮らす人も多いため、従来のように「家族でお墓を代々守る」ということが難しくなっています。
お墓を継ぐ人がいない場合、やむを得ず墓じまいを選択せざるを得ないケースも増えています。結婚したとしても、夫婦それぞれの実家のお墓を両方維持するのは難しいという事情もあります。
経済的な負担
お墓を維持するには、霊園や寺院に管理料を支払い続ける必要があります。また、遠方から墓参りをするにも、交通費や宿泊費などの費用がかかり、経済的負担が増します。
そのため、経済的な理由から、費用を抑えるために墓じまいを選択する人も少なくありません。墓じまいを行った後は、管理費のかからない納骨堂や永代供養墓、散骨など、費用負担の少ない供養方法を選ぶケースが多いです。ただし、墓じまいそのものにも一定の費用がかかるため、事前に十分な準備が必要です。
お墓が遠く管理が難しい
都市部で生活する人の中には、「お墓が遠く、頻繁にお参りに行くのが難しい」と感じる人が増えています。特に、結婚や就職、転勤、退職といったライフイベントを経て、実家から離れて暮らす人にとっては、物理的な距離の問題からお墓の管理が困難だと感じることでしょう。
近年、日本の人口は減少傾向にある一方、都市部の人口集中と地方の過疎化が進んでいます。そのため、地元のお墓を管理できる人がいなくなり、やむを得ず墓じまいを決断するケースも増えています。このような理由で墓じまいをする場合、現在の住居に近い墓所への改葬や、永代供養墓への納骨を選択することが多いです。
墓じまいは、後ろ向きなイメージばかりではなく、より供養しやすい環境を作り、現代にあった新たな供養のかたちを模索していくという、前向きな意味もあるのです。
墓じまいの手続きの流れ

墓じまいを行う際の一般的な手続きの流れについて解説します。
墓じまいには、法律上必要な手続き(例:改葬許可申請)と、慣習的に行われる儀式(例:魂抜き法要)があります。墓じまいを実施する時期に決まりはありませんが、お盆やお彼岸など、お墓参りが多い時期は避けるのが無難です。
離檀の申入れ
まず、現在の墓所の管理者(霊園・寺院など)に墓じまいの意向を伝えます。
お寺の檀家になっている場合は、墓じまいに伴い檀家をやめることになるので、今までの感謝の気持ちを伝えることが大切です。申し入れの際は、以下のような具体的な理由を伝えると、角が立たないのでお勧めです。
- 「遠方でお墓参りが難しい」
- 「子どもがいないため、お墓を継ぐことができない」
離壇料の相場は、法事1回分のお布施程度(10万円〜20万円)が目安です。高額な離檀料を請求されてトラブルになるおそれがある場合、弁護士に相談しましょう。
墓じまい後に別の場所に改葬する場合は、改葬許可証を受領する必要があります。
新しい墓所の確保、現地調査
次に、遺骨を移す新たな墓所を確保し、現地を調査します。
お墓を移すには、あらかじめ墓所と墓石を確保する必要があります。墓じまいの重要なポイントは、「先祖の供養を今後どのように続けていくか」を事前に決めておくことです。墓じまい後の供養の主な選択肢には、次のものがあります。自身や家族、特に、これから墓を継いでいく子孫の状況に応じて選択してください。
- 一般墓
これまでと同じく墓石のある墓に改葬する方法。 - 納骨堂
骨を納めるお堂のこと。一般墓よりも場所を取らないため、比較的交通の便の良い都市部にも多く、ロッカー式やタワー式、自動搬送式などが存在します。 - 永代供養墓
霊園や寺院が管理し、継承者がいなくても供養が継続される墓のこと。合葬タイプと個葬タイプがあります。 - 散骨・樹木葬
海や山などの自然に骨をまいて供養すること。遺骨を埋葬し、墓標として樹木を植える供養を「樹木葬」と呼びます。 - 手元供養
遺骨を自宅で保管して供養する方法。
新しい墓を決める際は、必ず現地調査をし、墓所や業者の見積もりを確認してください。合わせて、改葬の手続きに必要な「受入証明証」「埋葬証明証」を取得します。
墓が遠方にある場合、墓じまいと改葬以外に、分骨をする方法もあります。分骨は、お墓に納骨された遺骨を分け、一部だけ移動する方法であり、役所への確認や申請が必要となる場合があります。
改葬許可申請
墓じまいを行うには、「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)に基づき、市区町村長の許可を得る必要があります(墓埋法5条1項)。改葬許可申請の手続きは、次の流れで進めます。
- 改葬許可申請書の作成・提出(遺骨が現在ある市町村の役所へ)
- 必要書類を添付
- 市町村長の許可を取得(改葬許可証の発行)
改葬許可申請書に記載する事項は、次の通りです(墓埋法施行規則2条1項)。
- 死亡者の本籍、住所、氏名及び性別
- 死亡年月日
- 埋葬又は火葬の場所、年月日
- 改葬の理由、移転先
- 申請者の住所、氏名、死亡者との関係
申請書には、以下の資料を添付する必要があります(墓埋法施行規則2条2項)。
- 墓地又は納骨堂の管理者の作成した埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証する書面
- 墓地使用者等以外の者にあっては、墓地使用者等の改葬についての承諾書又はこれに対抗することができる裁判の謄本
- その他市町村長が特に必要と認める書類
改葬の場所を記載する関係上、申請の際には移転先のお墓をあらかじめ用意し、墓地の使用許可証、受入許可証を取得しておくことが必要です。申請方法は市区町村で異なりますが、行政書士などの専門家に申請書類の作成や手続きの代行を依頼することもできます。
魂抜き法要
遺骨を取り出す前に、「魂抜き法要」を行うことがあります。
魂抜きとは、墓石に宿る先祖の魂を抜き、墓石をただの石に戻す儀式です。地域や宗派によって、閉眼供養、性根抜き、芯抜きなどとも呼びます。僧侶に対して支払うお布施の相場は、1万円〜5万円程度が目安となります。
遺骨の取り出し、墓石の解体・撤去
法要後、遺骨を取り出し、墓石を解体・撤去します。
お墓は霊園や寺院から借りている形になっているので、更地にして返還する契約であることが多いです。解体・除去にかかる費用は、事前に石材店に見積もりを依頼しましょう。墓石の一部をプレート上に加工して思い出として残すサービスもあります。
遺骨の移動は、手で運ぶことが難しい場合には、ゆうパックなども利用可能です。
新しい墓所への納骨
移転後の新しい墓所へ、あらためて納骨を行います。
納骨の際には「納骨式の法要」を行います。このとき、僧侶にお布施を払うのが通常で、相場は10万円~20万円程度が一般的です。
墓じまいにかかる費用
以上の通り、墓じまいには様々な手続きが必要で、多くの手間と費用がかかります。
特に、改葬許可申請の手続きを専門家に依頼する場合や、新たに墓石を購入する場合には、更に費用がかさむことがあり、総額100万円以上となるケースも少なくありません。
墓じまいにかかる主な費用は、次の通りです。
費目 | 墓じまいの費用 | 内容 |
---|---|---|
離檀料 | 10万円〜20万円 | 寺の檀家を離れる際に支払う費用(法事1回分のお布施程度が相場) |
新しい墓所・墓石の確保 | 石材店、霊園、寺院等の見積もり | 石材店・霊園・寺院などにより価格が異なる |
改葬許可申請手続の代行 | 10万円〜30万円 | 行政書士や弁護士に申請手続きを依頼する場合の費用 |
お布施(魂抜き法要・納骨法要) | 10万円〜30万円 | 僧侶に法要を依頼する際のお布施 |
墓じまいにはまとまった費用がかかるので、事前にしっかりと計画を立てることが大切です。
墓じまいは単なる手続きではなく、今後どのように先祖を供養するかを決める重要な問題でもあります。家族や親族と十分に話し合い、費用負担も含めて、納得の行く形で進めることが非常に大切なポイントです。
墓じまいに関する法的トラブルと解決策

最後に、墓じまいを行う際に生じやすい法的トラブルと、その解決策を解説します。
墓じまいは高額な費用がかかることもあるので、金銭トラブルが生じやすい場面でもあります。特に、悪質な業者に騙されるリスクもあるため、よくあるトラブルと対処法を理解して慎重に進めるようにしてください。
悪質な業者によるトラブル
墓じまいに関する法的トラブルの一つに、悪質な業者との契約があります。
高額な請求や、必要のない押し売りなどの被害が報告されています。悪質な業者を避けるには、業者選びのポイントを理解してください。
- 事前に複数の業者から見積もりを取る。
- 「どの作業にいくらかかるのか」を明確にして比較検討する。
- 契約書の内容を確認する。
- 契約書を交わさず口約束だけの業者は避ける。
優良な業者を選ぶために、事前に弁護士に契約書をチェックしてもらうのも有効です。墓じまいという重要な場面で、契約書を締結しない業者は避けるべきです。なお、墓地によっては、石材店などの業者があらかじめ指定されていることがあります。
高額な離壇料の請求
墓じまいの際、お寺の檀家になっている場合は離檀の申入れを行います。このとき、高額な離檀料を請求されるトラブルは少なくありません。言われるがままに離檀料を支払う前に、以下の注意点をよく理解しておいてください。
- 離壇料の相場(10万~20万円程度)を事前に知っておく
- 離壇の理由を丁寧に説明し、穏便に話を進める
(例:「お墓が遠く、お参りが難しいため」など) - 高額請求された場合は、弁護士に相談する
高額な離壇費用を請求された場合は、一人で解決しようとせず、弁護士に相談してください。弁護士は、法律の専門知識と経験に基づいて、本人に代わって交渉を行うことができます。
親族間の不和と相続問題
墓じまいは、自身にとって重要な決断であると同時に、家族や親族にとっても重要な問題です。そのため、墓じまいの方針が一致しないと、親族間のトラブルが激化するケースがあります。
また、墓じまいをめぐるトラブルは、相続問題とも深く関連します。以下のように、先祖の供養が、相続時の遺産の分配と密接に関わることがあるからです。
- 「お墓を管理していた人が、相続財産を多く受け取るべきか」
- 「墓じまいの費用を誰が負担するのか」
したがって、墓じまいをするときは、可能な限り事前に話し合い、関係者の理解を得ることが大切です。反対する家族や親族がいるときは十分協議し、墓じまいの必要性を説明しなければなりません。また、相続問題が絡むケースでは、遺産相続に詳しい弁護士に相談するのがお勧めです。
まとめ

今回は、墓じまいにおいて注意すべき法律知識を解説しました。
墓じまいや改葬は、先祖を大切に供養しながらも、家族の負担を軽減するための重要な手続きです。近年、その件数は増加しており、相続問題の一環として「お墓」の扱いが争点となるケースも少なくありません。スムーズに進めるためにも、事前の準備が大切です。
弁護士に相談すれば、墓じまいに関する手続きを最後までサポートすることができます。
面倒な改葬許可申請の手続きに関するアドバイスをはじめ、お寺との交渉の代理や申請書類の作成代行なども対応することができます。墓じまいを検討されている方は、専門家である弁護士に相談すれば安心して進めることができます。
- 墓じまいは、現代の少子高齢化、未婚・晩婚化などを理由に増加中
- 墓じまいは、離檀を申し入れ、改葬許可を取得するなど手続きを要する
- 高額の離檀料の要求、悪質な業者による詐欺被害などのトラブルに注意
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