
担当弁護士
窪木稔
- 相談者
女性・20代後半・美容師 - 事案の概要
依頼者は夫との離婚を望んで離婚調停・婚姻費用の分担請求調停を申し立てました。夫からは収入が少ないことを理由に少額の婚姻費用が提示されました。しかし、夫の事業の状況、同居時の生活費の額などからすると、現在開示されている収入は過小であると主張しました。その後、調停を経て審判となった結果、この主張が認められ、相手が提示した金額より10万円高い婚姻費用の支払いが命じられました。
ご依頼時の状況
夫との間に子供を授かって結婚したものの、その1年後には性格の不一致で別居に至りました。
離婚調停では、離婚すること、子供の親権者を依頼者とすることについて、夫からは特段反論はありませんでした。しかし、別居時の婚姻費用について依頼者が希望額を提示した途端、夫から「収入が少ないため支払えない」という反論がなされました。
夫から課税所得の開示はあったものの、個人事業主として事業を営んでいたため、収入についてはある程度の操作が可能であると考えられました。そして、別居前の生活や夫の事業の状況などに鑑みれば、開示された収入は相当でなく、過小であると考えられました。
1年間の同居期間に対し、調停期間が既に6ヶ月に及んでおり、未払いの婚姻費用の金額も相当高額となると予想されたため、当事務所への相談を決意されました。
弁護士による対応と解決結果
弁護士による対応
夫は個人事業主ではあるものの、取引先には大企業もあり、多業種にわたって広く事業展開していました。また、離婚調停の最中には法人化しており、相当の売上があると考えられました。
そこで、過去の確定申告書など、税務関連の資料を精査したところ、夫が調停において開示した金額は、その年だけ低く調整されていることが明らかになりました。また、法人化の際にも、夫の役員報酬は1ヶ月120万円に定められており、経営が順調であることが判明しました。
一方で、夫が同居中に生活費として支出していた額は、月によってばらつきはあるものの少なくとも30万円程度と比較的高額であること、親族からの相続といった特段の事情はないことから、夫が実際に自由に使える金額は、申告額より高額である点を強く主張しました。
解決結果
約半年にわたって複数回調停を行ったものの合意に至らず、審判に移行しました。
審判では、当方の主張通り、夫が実際に得ている収入額は申告額より高額であると判断され、婚姻費用として毎月31万3,000円の支払いが命じられました。また、この際に判明した実質的な収入をもとに、その後の争いにおいて、離婚後の養育費についても、毎月18万5,000円を支払うことを内容とする調停が成立しました。
担当弁護士(窪木)のコメント

本件は一般的な事例に比べ、高額な婚姻費用・養育費が認められたケースです。
その背景には、夫が個人事業主(その後法人化して代表者となる)として、順調に事業を営み、自由に使える金銭が相当程度あったことが理由となっています。一方で、自身で事業を営む人ほど、収入の調整がある程度可能であり、実態と乖離した主張をしてくることがあります。
このようなケースでは、本事案のように、同居期間中の生活や、夫の事業の状況など、様々な観点から実際の収入額を算定し、裁判所に説得的に示す必要があります。この際、給与明細や源泉徴収票、確定申告書、課税証明書といった基本的な資料のほか、法人設立時の資料や議事録といった証拠も積み上げ、裁判所の理解を得られたことが勝因となっています。
婚姻費用については、調停で解決できない場合には審判に移行し、裁判官が証拠をもとに判断します。そのため、できる限りの資料を集めておくことが肝要です。
本事案のように、個人事業主や法人代表者の場合、離婚を切り出した(切り出された)タイミングの直後に役員報酬などの減額を行うことがあるため、その経緯を注意深く精査すべきです。直近の収入だけでなく、過去3~5年間の収入、生活状況を総合的に考慮するのが望ましいでしょう。収入そのものを証明できなくても、高額な買い物をしていたなど、「懐具合」が分かる情報も参考となるため、早い段階から整理しておくのがおすすめです。
参考となる解説

