人事労務

団体交渉への適切な対応は?「誠実団交義務」とは【弁護士解説】

2020年7月8日

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団体交渉誠実団交義務

労働組合からの団体交渉の要求に対して、適切な対応を行わなければ、その内容となる労働問題にかかわらず、交渉が不誠実であるとして会社側の責任を追及されるおそれがあります。

これは、労働組合の団結権、団体交渉権、団体行動権(争議権)という、いわゆる「労働三権」が憲法上の基本的人権として保障されており、会社側はこれに配慮しなければならないからです。

特に昨今では、企業内労働組合の数は著しく減り、企業外にあって労働者1名からでも加入できることを謳う、いわゆる「合同労組」「ユニオン」といった団体が主となって会社に団体交渉の申入れを行うことがあります。

そこで今回は、会社側で労働組合対応を行うにあたって理解しておきたい「誠実団交義務」の基本と、団体交渉に対して講ずべき適切な対策について弁護士が解説します。

「人事労務」弁護士解説まとめ

誠実団交義務とは

団体交渉誠実団交義務

ある日突然、組合加入通知、団体交渉申入書といった書面が会社に届いたとき、心の準備ができている経営者は少なく、書面に記載された内容が労働者保護の色彩がとても強く、動揺して初動対応を誤り、労働組合側に有利な交渉が進んでしまうケースが少なくありません。

団体交渉を行わないことは、労働組合法に定められた「不誠実団交・団交拒否」という不当労働行為となるおそれがあるため、適切な対応が求められます。つまり、団体交渉は誠実に行わなければなりません。これを「誠実団交義務」といいます。

しかし、労働組合に迎合していると、労働者側のペースで進められ、気付いたときには会社に不利な労働協約(例えば、労働者の解雇には必ず労働組合の同意を要するなど)を締結していた、ということになりかねません。

初めに、誠実団交を行わなわなければならない会社側の義務の内容について弁護士が解説します。

団体交渉とは

団体交渉は、労働組合などを窓口として、労働者が団体として結束し、会社と交渉する方法のことです。個別の労働者の労働条件について交渉されることもありますし、集団的労使紛争について交渉がもたれることもあります。

会社は、その雇用する社員が加入する労働組合や、その組合から権限を委譲された上部組合からの団体交渉申入れに対して、誠実に応じなければなりません。

団体交渉で議題となるのは、広く労働者の労働条件に関することであれば、どのようなことでも話し合いの対象となります。ただし、純粋に政治的な事項など、団体交渉での議題としてふさわしくない事項に関する交渉は、拒絶することができます。会社が応じなければならない団交議題を「義務的団交事項」といいます。

誠実に団交を行うためのルール

団体交渉を拒否したり(団交拒否)、団体交渉を誠実に行わなかったり(不誠実団交)といった行為は、不当労働行為となります。

団体交渉に形式的には応じていても、次のような誠意のない交渉態度であると、不誠実団交として違法と評価されるおそれがあります。

  • 団体交渉前から会社としての結論が決定しており、団体交渉による話し合いによっても変更する意思が一切ないことがあらかじめ明らかな場合
  • 団体交渉において会社の主張を一方的にいうことに終始し、労働組合の意見を全く聞かない場合
  • 会社の主張を基礎づけるのに必須となる資料の開示が一切なく、会社の主張の客観的な検証が不可能な場合
  • 会社の回答が団体交渉においてなされず、その後も会社の回答が長期にわたって留保され続けているケース

以上のようなケースでは、形式的には団体交渉が開かれていても、実際には団体交渉を行っていないのと同程度の効果しかないため、不誠実団交という不当労働行為にあたる可能性があります。

なお、団体交渉を誠実に行うべき義務は、決して、労働組合の主張を聞き入れなければならないことや、会社側が譲歩・妥協をしなければならないことまでをも意味するわけではないことに注意が必要です。

そのため、誠意をもって交渉を行ってもなお議論が平行線となり、これ以上団体交渉を続けても同様の議論の繰り返しとなることが予想される場合には、会社側から団体交渉を打ち切ることができます。

社外の労働組合とも交渉が必要

個人の権利意識が高まり、団体交渉の議題もまた、集団的労使紛争から個別労使紛争に移っています。そして、これに伴い、社内の労働組合は会社に忖度する、いわゆる「御用組合」となり、労働者の権利を守るのは社外にある合同労組、ユニオンといった種類の労働組合となっています。

そのため、会社の中には、組合の代表者が自社の社員ではないことから、そのことを理由として団体交渉を拒否しようとすることがあります。

確かに、社外の人と、社員の労働条件について話し合うことには違和感があるかもしれません。しかし、労働組合の考え方では、会社の社員が加入する労働組合やその上部組織であれば、実際に交渉の窓口となる人物(労働組合の執行委員長、書記長などの役職者)が自社の社員でなくても、団体交渉を行うべき義務が生じます。

会社が守るべき団体交渉のルール

団体交渉誠実団交義務

団交拒否、不誠実団交という不当労働行為にならないよう団体交渉の申入れには誠実に応じるとして、団体交渉の基本的なルールを理解しておかなければ、団体交渉を労働組合優位に進められてしまうおそれがあります。

団体交渉には一定の慣行的なルールがあり、団体交渉を何度も行った豊富な経験がある労働組合側はこれを理解しているからです。

団体交渉というと、労働組合員が怒声をあげたり机をたたいたり、集団になって取り囲んで社長を部屋に何時間も缶詰にしたりといった荒っぽいことを想像する方も少なくないのではないでしょうか。しかし、団体交渉における最低限のルールにも違反するような交渉態度の場合には、団体交渉をそのまま継続すべきではないケースもあります。

そこで次に、会社が守るべき団体交渉のルールについて弁護士が解説します。

団体交渉の議題

団体交渉の議題が、義務的団交事項に限定されるべきことは、先ほど解説した通りです。そのため、純粋な政治的議題であるとか、経営判断に関わる事項といった議題は、労働者の労働条件に関わるものでない限り、団体交渉で議論すべき内容ではありません。

また、団体交渉の議題は、団体交渉申入書などに記載する形で、労働組合側から事前に伝えることが一般的です。というのも、団体交渉において有効な議論をしたり、必要な資料を準備したりするためには、会社側にも事前に議題が知らされている必要があるからです。

そのため、交渉中に新たに争点にのぼった議題について、その回の団体交渉時に十分な議論をすることができない場合には、次回以降の議題に追加するかを両者で検討することとなります。

団体交渉の出席者

団体交渉において、会社側の出席者は、必ずしも社長でなければならないわけではありません。誰を参加者としなければならないというルールは法律に規定されておらず、両当事者が、自分側の参加者を自由に選定することができます。

社長が団体交渉に参加しないほうが、団体交渉のその場で結論を出すよう急かされることなく、会社が十分な検討時間を確保することができます。

しかし一方で、団体交渉における議論を適切に行うにあたり、必要となる判断権者を参加させる必要があります。決裁権限者が全く参加しない団体交渉は、具体的な協議を行う意思のないものとして、不誠実団交であると評価されるおそれがあるからです。

合わせて、弁護士に依頼することで、代理人として団体交渉に参加させることができます。ただし、弁護士を代理人とする場合にも、団体交渉で会社と実質的交渉をすることが労働組合の権利として保障されていることから、弁護士のみを団体交渉の参加者とすることはお勧めできません。

団体交渉の出席人数

多数の組合員が会議室に詰めかけ、無秩序に発言をすると、十分な団体交渉を行うことができない場合があります。そのため、団体交渉の出席人数が多くなりがちな場合には、あらかじめ、お互いの人数について「労使双方とも出席者は5名以内とする」など、一定の制限を設けることが必要となります。

特に、労働組合が会社担当者を脅迫したり、暴力を加えたり、物を投げつけたりといった態様の場合、もはやまともな交渉とはいえませんから、団体交渉を打ち切るべきです。

ただし、判断が微妙なケースもあります。議論がエキサイトすると、労働組合側だけでなく会社側であっても、声が大きくなったり発言が乱暴になってしまったりすることもあります。しかし、その程度が常識的な議論の範囲にとどまる場合には、それだけで団体交渉を打ち切る理由にはなりません。

団体交渉の態様に問題があると考えられる場合には、打ち切った後から会社の対応が不誠実であったとの反論を受けないよう、念のため、団体交渉の様子を録音などの方法で記録化しておくことがお勧めです。

団体交渉の日時・場所

団体交渉の日時・場所については、事前に労使間で話し合って決めるべき事項です。突然の団体交渉申入書にて労働組合側から団体交渉の日時・場所を一方的に指定されると、これに従わなければならないと感じる方も少なくありません。

しかし、団体交渉の日時・場所については話し合いで決めるべきルールであり、いずれかの当事者が一方的に決める権限があるものではありません。

一般的には、日時については会社側参加者の都合のつく業務時間外の候補日時を複数挙げて調整をすることが通常です。あわせて、場所についても、会社外の場所(貸会議室など)を指定し、会社側がその費用を負担するという運用がよく行われています。

団体交渉の時間

団体交渉を行う時間帯は、業務時間外とします。つまり、始業時間前、もしくは、就業時間後です。休憩中もまた業務時間外ですが、休憩時間が1時間程度の場合、団体交渉を行う時間帯には向きません。

会社は、団体交渉に誠実に応じる義務がありますが、業務時間中に団体交渉に応じる義務があるわけではなく、団体交渉中の賃金を支払う義務を負うわけでもないからです。

合わせて、団体交渉の時間は、通常2時間程度を予定しておき、これに合わせて貸会議室の予約を入れるようにします。時間が短すぎると団体交渉としての実態がなく不誠実団交となる危険がある反面、時間が長すぎても一度にできる議論には限りがあり、議論が間延びしてしまう危険があります。

誠実団交義務違反は、不当労働行為となる

団体交渉誠実団交義務

組合側からの要求が、いかに一見不当なものであるように感じたとしても、議論もせずにはねのけてしまうことを労働組合法は禁止しているのです。そのため、会社は、労働組合からの団交要求に対して応答し、実質的な議論を尽くす義務があります。

これは、労働組合が憲法上の権利を保障された団体であり、労働組合法によってその権利の実質的な保護がなされているからです。

そこで最後に、労働組合の権利を侵害せず、違法行為との評価を受けてしまわないために理解したい不当労働行為について弁護士が解説します。

不当労働行為とは

不当労働行為とは、労働組合法7条に定められた、労働組合を保護するために会社に禁じられた違法行為のことです。

不当労働行為には、次のような種類があります。

  • 不利益取扱い(労働組合法7条1項・4項)
    :労働者が労働組合であること、または、労働者が正当な労働組合活動をしたことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いをすること、労働委員会への申立てなどを理由として、不利益な取扱いをすることを禁止するのが「不利益取扱い」という不当労働行為です。なお、労働者が行った活動が、正当な労働組合活動の範囲外である場合には、懲戒処分など企業秩序違反に対する制裁を行うことも検討されます。
  • 黄犬契約の禁止(労働組合法7条1項)
    :不利益取扱いの一種として、労働者が労働組合に加入しないこと、あるいは労働組合から脱退することを条件として雇用契約を締結することは、「黄犬契約」として禁止されています。
  • 団体交渉拒否・不誠実団交(労働組合法7条2項)
    :正当な理由なく団体交渉を拒否すること、または、形式的には団体交渉を開催していても誠実な交渉が行われていないことを「団体交渉拒否・不誠実団交」という不当労働行為として禁止されています。なお、労働組合が大挙して押し寄せ、統制がとれず議論を行うことができない、既に議論が平行線であり有意義な議論ができないなど、正当な理由がある場合には団体交渉を拒否することができますが慎重な判断が必要です。
  • 支配介入(労働組合法7条3項)
    :労働組合の結成・運営に対して支配介入する行為は、「支配介入」という不当労働行為として禁止されています。

労働組合から団体交渉申入書を受け取ったとき、「話せばなんとかなるのではないか」と考え、労働者本人に対して申入れを取下げ、労働組合を脱退するよう働きかけようとする会社があります。しかし、組合加入の有無に関する事実確認を行うことは適法ですが、組合をやめるよう説得すると、「支配介入」の不当労働行為となります。

また、労働組合に加入したことが判明した後、そのことを理由として異動、転勤、配置転換の対象としたり、解雇したりして組合活動をできなくすることは、「不利益取扱い」の不当労働行為となります。

不当労働行為に対する救済

これらの不当労働行為は、労働委員会の救済命令の対象となります。労働組合が、都道府県に設置された労働委員会に救済命令を申し立てると、労働委員会において調査期日、審問期日が行われ、不当労働行為であると認定された場合には、申立ての内容に応じた救済命令が下されます。

労働組合側の申立てに理由がないと判断された場合には棄却命令が出されます。

あわせて、不当労働行為となる会社の行為は、民法上の不法行為となり、労働組合に対して損害賠償を行うよう命じられるおそれがあります。

都道府県労働委員会の救済命令に不服がある場合には、中央労働委員会に再審査の申立て、裁判所に対して取消訴訟の提起をすることができます。

「人事労務」は浅野総合法律事務所にお任せください!

団体交渉誠実団交義務

今回は、労働組合から団体交渉が申し入れられたとき、会社側として理解すべき適切な対応方針を弁護士が解説しました。労働組合から団体交渉の申入れがなされたとき、まずは慌てず冷静に検討してください。決してこれを無視したり放置したりすることなく、誠意をもって対応しましょう。

団体交渉を行う場合には、団体交渉で一般的に通用するルールを順守し、誠意をもって交渉したことを証明するため、できる限り詳細な記録を残しておくことがお勧めです。

不当労働行為として救済命令、差止、損害賠償請求などの対象となってしまわないよう注意が必要です。

団体交渉、その他労働組合対応にお困りの会社は、ぜひ一度、当事務所の法律相談をご依頼ください。

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