人事労務

業務中に新型コロナウイルスにり患した従業員は、労災の適用が可能?

2020年8月12日

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新型コロナウイルス感染症労災適用可能

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については、世界保健機構(WHO)によるパンデミック(世界的な大流行)宣言、日本における改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言など、戦後最大の危機的な事態となっています。

感染症の蔓延する状況下において、事業継続を図るため、業務中に従業員が新型コロナウイルスにり患し、発症してしまったときの対応策を理解しておく必要があります。

新型コロナウイルスが労災(業務上災害・通勤災害)にあたるかどうかは、事業所の所在地、業態、感染リスクの内容、程度、担当業務の内容などを総合して、「業務に起因して感染したものかどうか」をケースに応じて検討する必要があります。

そこで今回は、業務中に新型コロナウイルスにり患した従業員への、労災保険の適用が可能かどうかについて解説します。

本解説は、新型コロナウイルス禍の影響を受け、「法律面」において企業や個人がどのようなリスクを負うか、また、どのように事前のリスク回避、事後対処をしたらよいかについて、「法律」の専門家である弁護士の立場から解説したものです。

そのため、医療情報を提供するものではなく、新型コロナウイルスに関する医学的な側面の知識を提供するものではありません。

新型コロナウイルスに関する「法律面」以外の情報については、内閣官房ホームページの最新情報などをご参照ください。

浅野総合法律事務所のアドバイス

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が社会問題化しています。企業として、適切な対応が必要なことは言うまでもありません。

危機的事態に対して、適切な準備、対処を怠ると、従業員の健康安全を危機にさらしたり、取引先を失ってしまったり、企業の名誉、信用を毀損してしまったりといった重大なリスクにつながるおそれがあります。

「新型コロナウイルスに関する法律問題」弁護士解説まとめ

新型コロナウイルスと、労災の業務起因性

新型コロナウイルス感染症労災適用可能

労災(業務上災害)にあたるためには、業務遂行性と業務起因性が必要であるとされています。

事業主の支配下で、その施設管理下において業務に従事している際に生じた災害には、業務遂行性が認められます。しかし、地震や台風、落雷など、自然災害によって起こった被害は、事業主が準備を怠り、そのことが被害の拡大につながったなどの特別な事情のない限り、業務起因性が認められないのが原則です。

労災は、業務に内在する危険が現実化したとき、その業務を管理する使用者(会社)が負う責任であるため、業務に起因せずに負った疾病、傷害には適用されないからです。会社は、労働者を健康で安全に働かせられるよう職場環境に配慮する義務(安全配慮義務違反、職場環境配慮義務)があり、この判断についても、使用者(会社)の注意によっても回避することのできない疾病、傷害にまでは責任を負わないのが原則です。

一方で、たとえ自然災害が一因となっていたとしても、職場に内在する危険が現実化したものと判断できる場合には、業務起因性が認められ、労災となる場合があります。

労災と評価された場合には、労災保険法の適用を受けることにより、次の救済を受けることができます。

  • 労災保険給付(療養補償給付、休業補償給付、傷害補償年金、傷害補償一時金、遺族補償年金、遺族補償一時金など)を受けることができます。
  • 労災の療養のために休業する期間及びその後30日間の解雇が禁止されます。

新型コロナウイルスへの感染についても、業務を行うにあたって、定型的に感染リスクがあり、その危険が顕在化して新型コロナウイルスに感染したと判断できる場合には、業務起因性が認められることとなります。

新型コロナウイルス感染症の労災認定の判断基準

新型コロナウイルス感染症労災適用可能

新型コロナウイルスに感染した原因が業務上のものといえる場合には、労災の認定がなされることとなります。労災認定を受けるためには、その疾病、傷害が、業務によって生じたものであるといえることが必要です。

しかし、新型コロナウイルスの感染経路の特定は、市中感染の蔓延が疑われるにしたがって困難になっています。

正しい判断基準を理解し、従業員に必要な補償を与えられるよう、企業側が必要な努力をしなければなりません。

新型コロナウイルス感染症の労災認定に関する行政指針

この度の新型コロナウイルス禍へ対応すべく、厚生労働省より行政指針である「新型コロナウイルスの感染症の労災補償における取扱いについて」(令和2年4月28日基補発0428第1号)が発出されました。

この指針によれば、感染ルートが明確に特定できなかったとしても、業務中に感染した可能性が高いとみられる事例について労災認定を行う方針が示されており、実際に認定例も出ています。

特に業務の性質上感染の可能性の高い医療業務従事者については、業務外で感染したことが明らかな場合でない限り、業務により感染したものとして労災認定を行う方針が示されています。

指針において示されている、新型コロナウイルス感染症の業務起因性の判断をまとめると、次のとおりです。

医療従事者等 患者の診療もしくは看護の業務または介護の業務などに従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除いて、原則として労災保険給付の対象となる。
医療従事者以外の労働者で、感染経路が特定された場合 感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となる。
医療従事者以外の労働者で、感染経路が特定されない場合 感染経路が特定されない場合でも、複数の感染者が確認された環境下での業務、顧客などとの近接や接触の機会が多い労働環境下での業務など、相対的に感染リスクが高いと考えられる業務に従事していた労働者が感染したときは、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して判断する。

新型コロナウイルスの市中感染の拡大、蔓延に伴い、感染経路が不明のいわゆる「孤発例」が相当数出現していることから、「業務で感染した」と明確に特定できないケースも増加するものと考えられ、感染経路が明確に特定できない人も労災認定を行う必要性が高いといえます。

感染経路が調査によって特定できなかったとしても、他の労働者も感染していたり、顧客との接触をともなう業務に従事していたりすれば、労災認定がなされる可能性が高いといえます。

一方で、接待を伴う飲食店に通っていた、ライブイベントに参加していたなど、その他に新型コロナウイルスにかかりやすい行動がある場合には、労災認定がされづらい可能性があります。

個別のケースでの重要な考慮事情

その他、労災認定の判断基準は、新型コロナウイルスへの感染、発症が、業務に内在する危険の現実化と評価できるかによって個別に判断されます。判断はケースバイケースとならざるを得ませんが、その際に考慮要素となる事情には、次のような事情が考えられます。

  • 就労場所の立地
    :新型コロナウイルスの感染が拡大している地域であるかどうか、新型コロナウイルスのクラスターが発見されたかどうかなど
  • 事業所の業種・業態
    :顧客との接触を回避することが困難な業種・業態であるかどうかなど
  • 在宅勤務、リモートワークの有無
    :在宅勤務、リモートワークが実施されていたかどうかなど
  • 業務の具体的内容
    :業務の具体的な内容が、感染リスクの程度の高いものであるかどうかなど

労災申請への事業主の協力

労災申請について、労災保険法上、事業主は申請に協力などをする義務を負っています。そのため、従業員が新型コロナウイルスに感染して、労災申請を望んでいる場合には、これに可能な限り協力すべきです。

ただし、ここまで解説した判断基準、考慮要素をもとに、業務上の感染であるかどうかを確定することができない場合には、その証明まですべて会社側が責任を負うということではありません。

労災申請の際には、会社は事業主証明欄に署名することで、「労災の原因及び発生状況」について証明を行うこととなりますが、新型コロナウイルスの感染経路について確定できない場合には、この事業主証明については慎重な対応をすべきケースも少なくありません。

なお、感染が回避できたにもかかわらず、十分な感染症対策や事前準備を怠った結果、従業員を新型コロナウイルスに感染させてしまった場合には、会社側は、あわせて、安全配慮義務違反の責任を負い、慰謝料請求を受けてしまうおそれもあるため、注意が必要です。

参 考
新型コロナ禍での企業側の安全配慮義務違反への対策と、慰謝料の相場

新型コロナウイルスは収束する気配がありませんが、2020年8月現在、全国的な緊急事態宣言は解除されました。 そのため、引き続き第二波、第三波や市中感染を警戒すべき状況でありながら、一方で、事業継続を行 ...

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【ケース別】新型コロナウイルスに労災保険が適用されるか

新型コロナウイルス感染症労災適用可能

以上のように、新型コロナウイルスに感染した従業員に対して、労災保険が適用されるかについては、当該職場に定型的に内在する危険が現実化したものといえるかどうかについて、ケースに応じて検討する必要があります。

そこで次に、まずは新型コロナウイルスに労災保険が適用されるかどうかを判断する諸事情と、ケース別の検討について弁護士が解説します。

【ケース1】医療業務従事者

業務上、新型コロナウイルスへの感染の危険が定型的に生じる業務の典型例は、医師、歯科医師、看護師などの医療業務従事者です。病院やクリニックだけでなく、医療検査機関においても、新型コロナウイルスに感染する相当程度のリスクがあります。

医療業務従事者は、業務の性質上、新型コロナウイルスにり患した人との接触を回避することができない場合が多く、医療業務従事者の新型コロナウイルスへの感染は、まさに業務における危険が現実化したものと評価できます。

【ケース2】宿泊施設の従業員

新型コロナウイルスの感染者の増加を受けて、無症状者、軽症者を中心に、医療機関だけでなく、ホテルなどの宿泊施設で療養を行う状況となっています。

そのため、そのような新型コロナウイルス軽症者の維持隔離場所に指定された宿泊施設で働く従業員には、業務の性質上、新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者となる相当程度の可能性があります。

【ケース3】葬儀関係者

新型コロナウイルス禍においては、高齢者や基礎疾患を有する人を中心として、死亡者も増加しています。新型コロナウイルスに感染した人が死亡した場合に、葬儀関係者は、その葬儀を業務として遂行するにあたり、業務の性質上、新型コロナウイルスに感染するリスクが生じます。

このように、葬儀関係の業務を行う者もまた、業務に内在する危険が現実化した結果、新型コロナウイルスにり患する可能性があり、労災(業務上災害)と判断される可能性の高い業種といえます。

【ケース4】対面営業・受付窓口業務を行う従業員

会社の事業の性質が医療、葬儀などの感染リスクの高い業種ではなかったとしても、従業員の役割、職種によって、新型コロナウイルスの感染リスクが高い場合があります。

例えば、対面営業を担当する従業員、接客スタッフ、受付窓口業務、コンビニやスーパーなど小売店のレジ業務といった業務では、顧客との接触を回避するのが相当困難であり、感染リスクが常に業務に内在しています。

マスクやアルコール消毒に加えて、透明シート、アクリル板、フェイスガード、ビニール手袋などで防備したとしても、業務遂行においてウイルスに暴露する可能性は存在します。

【ケース5】繁華街の飲食店従業員

都市部など人口密集地域ほど、新型コロナウイルスの集団的な感染である「クラスター」が生じていると報道されています。特定警戒都道府県(東京都、大阪府、北海道、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府、兵庫県、福岡県)では、市中感染の拡大が懸念されており、特に接客業においては、新型コロナウイルスへの感染が、業務に内在する危険であるといえます。

そのため、クラスターが多数発生している繁華街であり、中でも、接待を伴う飲食店、ライブハウス、イベント業といった職種では、業務の性質上、新型コロナウイルスに暴露する可能性が、他の職種よりも高いと言わざるを得ません。

このような特定の業種において、業務の遂行中に新型コロナウイルスにかかってしまった場合には、業務起因性が認められ、労災と認定されやすいと考えられます。

通勤中に新型コロナウイルスにり患した社員の通勤災害

新型コロナウイルス感染症労災適用可能

会社のオフィスに通勤中の従業員が、通勤中に新型コロナウイルスに感染し、発症した場合に、労災(通勤災害)の認定を受けることができ、保険給付を受けることができる場合があります。

一般的に、新型コロナウイルスは「3密(密接、密集、密閉)」の場所で感染しやすいといわれており、満員電車こそまさに「3密」なのではないかといわれています。一方で、満員電車で感染が蔓延しているかどうかは、科学的には証明されていません。

ただ、「3密」であるかどうかはともかくとしても、通勤途上において、新型コロナウイルスの感染者からウイルスのばく露を受け手、感染、発症に至る可能性は当然あります。そして、感染経路が通勤途上であることが証明されれば、労災(通勤災害)の認定を受けることができ、労災保険給付を受けることができます。

特に、前述した13の特定警戒都道府県では、市中感染が拡大していることを前提に、労災(通勤災害)の認定についても、他に特段の感染経路の特定などがない場合には、ある程度広く認められるべきものと考えられます。

「企業法務」は浅野総合法律事務所にお任せください!

新型コロナウイルス感染症労災適用可能

今回は、新型コロナウイルス禍において、従業員が新型コロナウイルスに感染したとき、これが業務に起因する労災となるのかどうかについて弁護士が解説しました。

会社は、その人生の大半を過ごす場所となることが多いため、安全な環境を整えておく義務が使用者側(会社側)にあります。業務に性質上内在する危険が現実化したといえる場合には、新型コロナウイルス感染症へのり患が労災と認定される可能性があります。

会社として、労働者の生活を守るため、適切な対処を行わなければなりません。

新型コロナウイルスに関連した社内の人事労務をはじめ、企業法務についてお困りの会社は、ぜひ一度、当事務所の法律相談をご依頼ください。

「新型コロナウイルスに関する法律問題」弁護士解説まとめ

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